今回はポーランドのゲームスタジオ、11 bit studiosが開発した
This War Of Mine(PC・iPhone・Android)
をお送りしたいと思います。
ジャンルはサバイバルシミュレーションと呼称させてもらいます。
多少の誤字はあるもののローカライズもしっかりされているので安心。
■はじめに
■昼パート
■夜パート
■まとめ
本作は戦時下の一市民として生き延びることを目標としたゲームです。
ゲーム開始時は見ず知らずの3人組が放棄された空き家に逃げ込むところから開始。それぞれ料理がうまい、隠密行動に長けている等の特徴を持っているため適した仕事を割り当てることが重要です。組み合わせはシナリオによって様々であり、自分でキャラクター設定ができるモードもあります。画像取り込みもできるのでお気に入りのメンバーでわいわいするなり嫌いなあいつを苦しめるなり自由自在。
ゲームは隠れ家内の環境をクラフトする昼パートと物資を探しにいく夜パートの二つで構成されています。
■昼パート
隠れ家は最初ゴミだらけなのでまず住環境の整備から始めます。まだ逃げてきたばかりで皆元気なのでテキパキ仕事をこなしてくれますよ。たまに近隣住民がやってきて物々交換などを持ち掛けてきます。ゲームの進行によっては必要な物資が偏りがちなのでピンチな時に来てくれると非常にありがたい。
しかし場合によっては一方的に物資の供出を求められるイベントもあります。
こういうイベントはゲームなんだから、わらしべ長者的な感じであげておけばいずれリターンがあるだろうと考えがちです。まあ確かにそういう一面も無くはないのですが、薬一つあるだけで生死が分かれる場面も多いため安易な決断はできません。またリターンと言えるリターンが無い場合も当然考えられます。
ゲーマー的には効率重視の選択を選びたいところですがそれにちょっと待ったをかけるのが生存者のメンタルシステム(仮称)です。
これは難しいことは何もなく、一般的な倫理に反する行動をすると鬱っぽくなっていき最終的に蒸発したり自殺したりしてしまいます。
プレイヤーキャラクターは戦争から隠れているだけの一般人のため戦闘行為もサバイバルも全くの素人です。困っている子供を見捨てる、他人の物資に手を付けるという行為を繰り返すと心が折れてしまいます。他のメンバーが元気であれば励ますこともできるのですが、そこまでいくような極限状態では大体何らかの問題を抱えているため自分のことで手一杯なことが多いです。
そしてついに一人になってしまった…が、消費リソースが減ったため生き延びられたというパターンもあります。状況によっては回復の見込みがないメンバーを見捨てる…という選択肢が必要になる場合もあるかもしれません。
あるいは心を鬼にして略奪行為に手を染める選択肢もありますが危険を冒して成功しても良心の呵責に耐えられないでしょう。ただそういう行為に対して抵抗が少ないキャラクターもいます。本作のような特殊な環境下ではそうした人間のほうが生き延びるのに有利です。
開発にあたって実際の戦災被害にあった方にリサーチをしたそうでこのあたりのリアリティは真に迫るものがあります。
■夜パート
いくつか探索ポイントが提示され、少ない情報を吟味して探索に向かいます。
向かった先で瓦礫の撤去などをする必要がある場合もあり、予めどんな道具を準備しておくかも重要です。
また他の生存者と出会う場合もありますが、友好的かそうでないかは慎重に判断しなければなりません。同じような立場にある生存者であってもこちらを敵だと判断すれば襲い掛かってくる場合もあります。相手も生きるために必死なため、例え戦闘を切り抜けたとしても同じ市民を殺してしまったという罪悪感で鬱になってしまう危険があります。
最初は危険が少ないところを選んでいればリスクはあまりないのですが、戦争が長期化するにつれて当然物資は枯渇していき、危険な武装集団の目を盗んで物資を探索することも避けられなくなってきます。ちょっとした怪我でも悪化してしまうと死に至る可能性があるためどんな状況でも戦闘は避けたいですがなかなかそうもいきません。
プレイヤーキャラクターの大半は一般人なので大した装備がない状態で正面戦闘をすればギリギリ勝てるかどうかというところです。弾薬も貴重で物々交換にも使えるためあまり積極的に戦闘するのは難しいバランスになっています。
■まとめ
戦争を題材としたゲームというと兵士を主人公とした華々しいヒロイックなゲームが大半ですが、本作は単なる被害者に過ぎない一般人にスポットを当てています。
戦時下を限られたリソースで耐え抜くというゲームだと「60seconds!」等もありますがあちらはブラックユーモアも交えながらコミカルに描いているのに対し、本作は徹底した戦争の陰鬱さ、リアルさを描いています。ほっこりするイベントはほとんど無く町全体からすり減っていくだけの資材をいかにして自分の懐に収めるか、あるいは助け合うかの選択がダイレクトに生死に関わります。
1日、1日が過ぎるごとに命が長らえたことを感じ、物資が減っていく事実をリアルに突きつけられます。
ゲームの目的である戦争終結の日もあやふやでありプレイヤーも明確な目標が設定できません。プレイヤーが割り切れれば効率的な行為であるはずの略奪も本作では悪手であるケースが多く、
「物資は減る一方で先の希望もない!どうやって生き延びればいいんだ!!」
となってきます。
本作は暴力に訴えることが悪手であり、人を助けることが必ずしも報われるとも限りません。大作戦争FPSも楽しいのですが、たまにはこういった一面から戦争ゲームに向き合ってみるのも良いのではないでしょうか。
「母さんが病気で...。お願いです。助けてください…」