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イチオシレビュー : METRO EXODUS

今回お送りするレビューはウクライナの4Aゲームスが開発した

METRO EXODUS (PS4)

です。

なるべく致命的なネタバレは避けますが気になる方はご注意下さい。

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今作はホラー系FPSであるMETROシリーズの3作目となります。

さらに大元を辿るとロシアで発売された小説が原作となっております。そちらは未読。

 

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本シリーズはタイトル通りメトロが主な舞台です。核戦争が勃発した時に地下鉄に退避した生き残りが新たな社会を形成し細々と生活しているという世界観。

ミュータントやアノマリー(超常現象)といったお約束も抑えているのですが、METROの特徴として精神に影響を及ぼされているような演出も多いです。

わかりやすいもので言うと見えるはずが無いものが見えたり他人の記憶がフラッシュバックしたりといったものですね。 METROはガンガン進んで敵をなぎ倒していくタイプのシューターではなく、何も無い静かな場所で発生するこうした演出が光るゲームです。

 

さて、本ブログではシリーズ初レビューとなるのですが、本作エクソダス(脱出)ではその名の通りいきなりメトロを飛び出して地上に出て行くことになります。

過去シリーズでは地上は死の世界であり歩くには決死の覚悟が必要な場所でした。外界と連絡をとることはできず世界は滅び、モスクワの地下に残った人々だけが最後の人類だと信じられていたのです。

しかし今作で主人公が地上で無線を受信したことにより生き残りが他にも存在することを知り、生存者と地上の生活圏を求めて汽車オーロラ号で当て無き旅に出ることになります。

 

…実際は例によって拉致られた後に誘拐犯から汽車をぶんどったらそれがモスクワで最大勢力を誇るハンザという武装集団の持ち物であり、帰るに帰れなくなってしまった状況なのですが物事は捉え方次第です。新天地への期待に胸が高鳴るぞ!

 

旅路を共にするのは幾度と無く共に死線をくぐり抜けた上官のミラーとその娘であり主人公アルチョムの妻であるアンナ。そしてオーダーの戦友達です。

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頼もしき仲間達

アンナは美人設定だったのですが過去作ではザ・洋ゲーみたいな頬骨の出た顔つきでいまいちかわいくないなと思っていたのですが本作ではきちんと美人さんです。

しかも夫婦のコミュニケーションまで無駄に細やかに表現してきます。デーモンに食われろやったねアルチョム。

でも旦那は今時珍しい無口系主人公で無線に全然返事をしないので関係が壊れるのも時間の問題かもしれません。

 

過去作のMETROは孤独な物語で、途中で出会う人々はほとんどの場合悲しい別れが待っていました。ほとんどが死んでしまったり二度と会わなかったりなので過去作で印象に残っているキャラクターは少なかったのです。

それがある意味METROの味でもあったのですが、そんな本シリーズだからこそ仲間と共に旅を続けられるというのは不思議な温かみをもたらしてくれました。新たな地を訪れる度に仲間が増え、オーロラ号にも車両が増えていきます。

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仲間と過ごす穏やかなひととき

まあ実際の戦闘はほとんど独りでこなすことになるのですが…アルチョムは最強のレンジャーなので仕方がありません。別に足手まといなんていらないんだから。

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孤独と静寂。湖面に映った月が美しい

 

 ■特徴的な要素

METROは基本オーソドックスなオフラインFPSなのですが独自のゲーム要素として

  • ガスマスクフィルターの管理
  • 自家発電バッテリーの管理

があります。

 

フィルターは読んで字の如しですね。汚染地域ではこれがないと呼吸できずに死んでしまいます。危険地帯でフィルターが切れると最悪ゲーム的に詰む可能性があり、緊張感の演出に一役買っています。今作ではクラフト要素によりある程度自作することが可能ですが、フィルターを節約できればリソースを他のものに回すことができます。

 

バッテリーですが、アルチョムは手回し式の発電機を常に持ち歩いているのでライト等の電子機器が切れそうな時にはこれをカシャカシャして発電します。このバッテリー管理というのが本作独自の演出の大きな要素を占めています。

真っ暗闇の中でバッテリー残量に気を配りながら進むというのが「まさに今、自分が危険の中を歩いているのだ」という気持ちにさせてくれます。すぐそこに何かの気配がする中、発電するためにトリガーから手を離すその選択が命取りにならないことを祈りながらカシャカシャします。

余談ですがあまりに何度もカシャカシャするのではっきりイメージできるくらい頭に残る作業です。アルチョムもこの音を聞いている間は希望が感じられるというくらい自家発電しまくります。

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ある意味銃よりも頼もしい相棒

■武器のカスタマイズ

また今作から追加された要素として銃器の柔軟なカスタマイズ要素が挙げられます。さらにその場で適したアタッチメントに付け替えられるので戦術の切り替えが容易に可能です。前作までも一応できたのですがあまり種類が無く好みのカスタマイズをするという感覚はありませんでした。

とは言えお約束として対人ステルス武器と対ミュータント用ショットガンの2つを携帯していればそこまで困ることはないかと思います。本作ではそれに加えてスパルタン武器というステルスに優れた武器も持ち運べるので出先でアタッチメントを取り替えたいというシチュエーションはあまりありませんでした。

まあできないよりはできた方がいいですよね。

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銃器のカスタマイズ。出先でも簡単な組み替えは可能

■エネミー

敵は性格付け・攻略法がはっきりしており個性的です。

特に大嫌いなお気に入りがスパイダー。

暗いところを好み、光を非常に嫌うため光源が手放せません。ということは当然、真っ暗なシチュエーションが多くなります。こいつの気配がすると「ああ来たかあ」と思いながらバッテリー残量をチェックすることになります。

ライトは指向性があるため背後は死角になるので常に音に気を配って光を絶やさないように行動します。あまり強制されている感じが無くゲーム性が変わるので上手い演出だなあと思いますが慣れたからそう思うだけかもしれません。

過去作ではかなり嫌な思いをしたものですが慣れって怖いですね。

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視界が奪われた中カサカサと音がしたら…やつらはすぐそこにいます

この他にも空を飛ぶデーモンやすぐに仲間を呼ぶウォッチメンといったミュータントが数多く登場します。遭遇までの緊張感が重きを占めるゲームバランスもありマンネリを感じることはあまりないかと思います。

ただ人間は相変わらず目が悪く、暗いところにいれば全くこちらに気が付きません。ですがこのはっきりした設定がステルスプレイの楽しさを生んでいるのでこれからも盲目で居て下さい。敵がリアルに賢かったら主人公は一歩も先に進めません。

 

■マップ

本作はステージ制のためオーロラ号に乗って各地を旅します。ひたすら地下道を進む過去作も好きだったのですが…ちょっと没個性になってしまったかもしれませんね。まあこれはこれで。

湿地帯、雪原、森林、砂漠と様々なシチュエーションが用意されています。ちょっと網羅されすぎてて地下道ばっか作ってたスタッフにストレスが溜まっていたのかなと勘ぐってしまいました。

 

最近の大型タイトルは地形再現をしっかりしてくるようになったのでそういうのを見るのも海外ゲームをやる楽しみの1つです。

だがしかし、初めて見たカスピ海は一面の荒野だった…。それでもきちんと地形再現とかされてたんでしょうか?

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メトロらしからぬ乾いた灼熱の砂漠。ここカスピ海らしいです。ヨーグルトどこー?

各地で出会う人間たちは独自の価値観により社会を形成しており存在感があります。

大体ヒャッハーな人か壊れてしまった人かのどちらかなのですが、それぞれ独自の美学や生い立ちを持っており、ゲーム的に倒すことになるけどまあ思想は理解できなくはないなと思うこともありました。ステージ毎に悪役の個性が出ているのでそう言う意味でのマンネリ感を感じることはありませんでした。

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長く独りでいすぎたために人形に向かって話し続ける提督

またステージ毎にオーダーのメンバーに活躍場所が与えられており少しずつ人となりがわかってきます。こうした丁寧さもポイント高いですね。

しかし許せないのが愛妻アンナの援護を受けるシーン。

敵に長距離から狙撃されてピンチなシーンでアンナが援護してくれるシチュエーションだったのですが目にゴミが入ったとかジャムったとか言ってるだけで一向に助けてくれません。仕方が無いのでアルチョムがこそこそ近づいて仕留めたら

「命中!ざまあないわね!」

とか嬉しそうに報告してきました。

いやいや片付けたの私ですが!?

せっかく前作の高慢さが抜けて良い奥さんになったのにここはイラッとしましたね。たぶん難易度上げてプレイしたせいだと思うのですがオーダー1のスナイパー()って感じで残念でした。せっかくの見せ場だったのに。

 

本作は一応マルチエンドが採用されており、仲間の生存率や作中の行動によってエンディングが分岐します。基本的に無闇な殺生をしなければメンバーも生還できるしグッドエンドにたどり着けるようですね。その辺は今までのシリーズと同じです。

 

■ミラーとの関係

ストーリーに関わるネタバレがあります!!

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アンナは2作目からの登場、その他のメンバーは本作からの登場です。唯一ミラーのみが1作目からの付き合いです。

 

元々は襲撃に遭っている故郷に救援を呼ぶために旅に出たアルチョムに手を差し伸べてくれた軍人だったのですが、その後何度も共に死線をくぐり抜け本作では上官でありながら戦友であり義父という深い関係性になりました。

ただどうもアルチョムへの当たりがキツいなーとずっと思っていました。最強のミュータントキラーでありダークワン殺しでもあるアルチョムを便利な偵察兵くらいの扱いしかしていません。

何かあればいつもアルチョムが責められると仲間も憤慨していましたがその反面最も危険な任務に割り当てられるのは一番信頼しているからでもあるという評価もあり、オーダーの中でもミラーとアルチョムの関係性の理解は難しいようです。

 

最終ステージでは雪に閉ざされた亡霊の町…ノヴォシビルスクの地下を病に倒れたアンナの薬を探してミラーと共に進むことになります。最期の最期でこれぞメトロ、というステージを用意してくるあたりやっぱりここのスタッフはわかってますね。派手さが無いので盛り上がりに欠けるという意見もあったようですがメトロはこれで良いと思います。

ミラーと共に進んでいく中で過去作で一緒に戦った思い出が蘇りました。そして戦いの中でミラーがアルチョムをどのように思っていたのかが語られます。1作目から考えるとプレイヤーとしても長い付き合いになるので感慨深いものがありました。

娘のアンナを任せるくらいなので嫌いではないのでしょうがいつも怒られてばかりでアルチョムも独白の中で視野が狭くて頑固だと言っていました。アルチョムがミラーへの不満をはっきり口にするのは珍しい気がしたのですが今作で関係に決着をつけようという布石だったのかもしれませんね。

 

■まとめ

ぜひ次回作も作って欲しいですが環境が変わりすぎてしまったので本作で終わった方が綺麗かもと悩ましいところです。目的らしい目的が無くなってしまったのですがモスクワに帰るというのでもう一本くらい作れるかもしれませんね。カーンとかダークワン達とかのその後も気になりますし。

 

一見オープンワールド風のゲームですが、実際のところ多少の選択肢があるもののリニアなゲームであることに変わりはありません。これは別に悪いことではなく、むしろMETROというブランドには最適な手法なのですがちょっと完成されすぎてしまったなという気はします。かといってマンネリを打開しようとして下手にオンライン要素や本格的なオープンワールド化するくらいなら別タイトルでやって欲しいですね。

 

総合して間違いなくオフラインFPSの歴史に名を残す名作です。個人的にはもっとメトロを歩きたかったですが、オーロラ号での旅はそれに代わる満足感をもたらしてくれました。

いつのまにか洋ゲーのストーリーのレベルは非常に高くなっておりこれくらいのものが出てくるのは当たり前になりましたね。長きに渡るアルチョムの旅は本作で一段落となります。次は2人の子供が主人公になってアルチョムが死んだりするんでしょうか…。

それはそれで楽しみです。

 

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アンナ「アルチョム、聞こえる?アルチョム...返事をして…」

アルチョム「…」